医師 転職のここだけの話
なお、この例では増資は時価でおこなわれると想定したが、額面発行や中開発行がおこなわれる場合には、前節で説明したように実質的に時価発行と株式分割をおこなうことになる。
このうち、株式分割は発表時の株価に影響を与えないので、額面発行増資の発表が株価に与える影響は時価発行増資の場合と同様になる。
固エクイティファイナンスと1株当たり利益の増減3、1増資が1株当たり利益に与える影響。
エクイテイファイナンスの意思決定をおこなう際に1株当たり利益への影響が問題にされることがある。
この場合、通常は株式数増大によって1株当たり利益の希薄化(ダイリューション)が問題になるが、日本のように株価水準(株価収益率)が高い場合、増資で得た資金で新規投資や借入金返済をおこなうと、逆に1株当たり利益が増大することがありうる。
このことを数値例を用いて説明しょつ。
[例3]C社の発行済み株式数は10億株で、税引利益は200億円(1)株当たり20円)である。
C社は時価発行増資で250億円調達して新規投資をおこなうことを計画している。
新規投資がただちに8%の税引前投資収益率を生み、法人税率が50%であるとすると、増資後の株当たり利益は、発行価格が(1)250円(株価収益率12、5倍)の場合と(2)1、000円(株価収益率50倍)の場合とでは次のように異なる。
(1)発行価格が250円(株価収益率125倍)の場合新規投資によって新たに生まれる税引利益は250億円XO、08X(10、5)10億円で、新たに発行される株式数は250億円";250円1億株である。
したがって次の計算式から、増資によって1株当たり利益は20円から19、1円に低下する(ダイリューションが生じる)ことがわかる。
20C億円・10億円億株・1億株(2)発行価格が1、000円(株価収益率50倍)の場合増資の際の発行株式数は250億円";1、000円2、500万株になるので、増資後の1株当たり利益は次のようになる。
200億円十10億円億株・0、25億株この場合には増資によってむしろ株当たり利益は増大する(逆ダイリューション)。
これは、増資の際の発行価格が高いので、発行株数が少なくてすむために起こる。
以上の例では増資によって得た資金を新規投資に用いるとしたが、借入金返済に用いる場合でも、以上の計算で新規投資の税引前投資収益率を借入金の利子率に置き換えれば、増資後の1株当たり利益を同じように計算できる。
例えば、利子率が8%であれば、増資額250億円分だけ借入金を返済する場合でも、税引利益は250億円XO、08X(10、5)10億円増加するので、増資後の1株当たり利益は以上の計算結果と同じ値になる。
このように、増資によって得た資金で新規投資や借入金返済をおこなう場合、株当たり利益が高まるか否かは株価水準の高低によって決まる。
これを一般化して表すと、次のようなことがいえる。
以上の式は株価収益率が税引後の投資収益率または税引後利子率の逆数より低い場合には、増資によって1株当たり利益が低下し、逆の場合には1株当たり利益が増加することを示している。
このことを[例3]にあてはめてみると、株価が250円の場合には、株価収益率が12、5で、税引後投資収益率の逆数125より低いので1株当たり利益の低下が起こるが、株価がX(1一0、5)1、000円の場合は、株価収益率50が税引後投資収益率の逆数25を上回るので1株当たり利益は上昇することになる。
したがって、1980年代後半の日本のように株価収益率がきわめて高い場合には、増資をおこなって借入金を返済すると1株当たり利益が高まる。
このことから、株価収益率が非常に高いときに増資をして借入金返済をおこなえば、株価にプラスになるように思われる。
しかし、ここで注意すべきことは、増資は株当たり利益だけではなく、株価収益率にも影響を与える可能性があるということである。
増資で得た資金で新規投資をおこなった結果、企業の株主資本利益率が高まれば株価収益率は上昇し、そうでなければ株価収益率が低下する。
したがって1株当たり利益が変化すれば、そのまま株価の変化につながると考えではならない。
増資がおこなわれた後、株価が維持できるかどうかは、新規投資の収益率が資本コストを上回るかどうかという観点から考えなければならないのである。
同様に、増資で得た資金が借入金返済に用いられる場合には、資本構成の変化が企業価値にどのような影響を与えるかという観点から評価される必要がある。
3、2自社株取得と1株当たり利益。
自社株取得が株価に与える影響についてはすで、に説明したが、ここでは、資金を借り入れて自社株取得をおこなうと1株当たり利益にどのような影響があるか考えてみよう。
自社株取得は、株式市場から時価で株式を取得することなので、マイナスの時価発行増資という性格を持っている。
したがって、自社株取得が1株当たり利益に与える影響については、これまで述べてきた増資が1株当たり利益に与える影響とちょうど逆のことがいえる。
すなわち、このように、株価収益率が税引後利子率の逆数を上回る場合には、借り入れをして自社株を買い戻すことによって1株当たり利益が低下し、逆の場合には1株当たり利益が増加する。
このことから、株価収益率が低いときには借り入れをして自社株取得をおこなえば1株当たり利益が増大するので、株価にプラスになると主張されることがある。
しかし、借り入れによる自社株取得をおこなう場合にも1株当たり利益だけでなく株価収益率が変化する可能性があるので1株当たり利益の変化がそのまま株価の変化につながると考えてはならない。
借り入れによる自社株取得は、企業の資産内容は変えず、資本構成の変更という性格を持っているので、資本構成の変化が企業価値にどのような影響を与えるかという観点から評価される必要がある。
固資本コストに関する誤解4、1株主資本のコストに関する誤解。
本章で述べてきたように、株主資本を調達して投資をおこなう場合、株価下落を招かないために投資からあげるべき最低限の収益率は、内部留保と増資で違いはなく、また増資形態(時価発行、額面発行、中開発行)にかかわりなく、いずれの場合も株主の必要収益率(株主資本コスト)である。
もちろん、新株発行をおこなえば実際には様々なコストがかかるため、その分だけ増資は内部留保よりコストが高くなるが、それは本質的なものではない。
ところが日本では、これまで株主資本のコストに関していくつかの誤解が存在した。
これらの点について理論的に整理しておこう。
まず第1に、わが国では配当流出分だけを株主資本のコストと考えるのが一般的な傾向であった。
この議論は、負債のコストが資金の社外流出をともなう利子であることの類推からおこなわれるもので、実際に社外流出をともなう配当が株主資本のコストであると考えるのも一見もっともらしくみえる。
しかし、これは、株式投資のリターンがインカムゲインとキャピタルゲインからなり、この両方を含めたトータルリターンのベースで株主の要求する収益率を達成することが企業価値の増大につながるという立場に立っていない議論である。
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